バックミンスター・フラーゆかりの「ダイマクシオン」ケース

ストレートラインと造形美ある設計
直線は美しい。そんな形状を極めることを意識しました。
いままでにない形。単純な形状で人の心を捉える。シンプルで工芸的な領域にまで完成度を高めたい。
そこで、大変基本的な構造でありながら20世紀以降の建築デザインなどに多大な影響を与えた多面体「ダイマクシオン・マップ」にスポットを当てました。
「ダイマクシオン・マップ」は、アメリカの天才建築家バックミンスター・フラーが昭和初期の1930年代に考案しました。
「ダイマクシオン投影図法」により、全地球の陸地をほとんど歪みのない形状と正確な比率で平面化して表現します。
「ダイマクシオン・マップ」は、このような陸地の平面化が成された世界初の世界地図です。
今回は、彼が米国で特許出願/成立した明細書(第2393676号)にある特許図面を参考に、三角形と四角形で構成された
「ダイマクシオン・マップ」を「身」と「フタ」式の箱にしてみました。
「箱」、「ケース」として設計する場合、「フタ」「身(本体、親箱とも言う。)」「スリット(ヤロウ)」の3つのパーツに分かれます。この3つのパーツを、立体的に美しく組み立てられる設計を行いました。
配色も、伝統的な趣があるように、和テイストにまとめてみました。
スリットはやや光沢がある深い群青色、それ以外の外側は白です。
注目を集めやすい配色です。
高級感を演出するために、丁寧な品質の高い設計と職人技を追求しました。
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ひたすら「美しさ」 にこだわりを
風合いを損ねるものを徹底的に排除しました。
製造的な容易さより、見た目を綺麗に

芯材である板紙を固定するために、ほとんどの貼箱では、「テープ止め」という手法が用いられます。
表側から絆創膏のように、板紙の「角(カド)」を止めます。これは、製造的な容易さや、コスト面では大変有用な手法です。しかし、「テープ」の上に外装紙を貼っても、固定箇所は盛り上がって見え、なにかそこにあることが一目瞭然です。そして風合いを損ねる要因の一つです。
見た目を美しくするため、視線が行き届く「箱」の表側、裏側(内側)には、「テープ止め」の盛り上がりが見えません。
「テープ」は、見えなくなるよう大変巧妙で特殊な配置になるよう構造設計されています。
また、「フタ」、「身」とも2重構造になっています。
それぞれの「フタ」、「身」の裏側は、その構造が分からないほどに、丁寧な設計です。
難易度の高い展開図設計

外装紙の貼り合わせ時にできる「継(つぎ)」が、どこから見ても気づきにくい設計にしています。
これは、多面体の展開図のストレートラインの要である稜線に、わずかな幅で「継」が重なるように、難易度が高く、かつ精度の高い設計をしているからです。
幾何学的な観点から高い有効桁数で数値計算を行い、ミクロン単位で実現できるようにCADアプリケーションを駆使し、芯材と 外装紙の展開図設計をしています。
その位置決めをはじめ、設計精度と同程度の誤差内で加工する京都の高い職人技もあります。
このように芯材と外装紙の展開図は、風合いを重視したストレートラインが際立つようにそれぞれ工夫した設計図面をもとに作られています。
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仕様
【素材】板紙、和紙風装丁用洋紙
【サイズ】縦:約90ミリ、横:約90ミリ、高さ:約90ミリ
参考文献
尾曲幸輔(2005)『デザイン再考 ~バックミンスター・フラーをとおして~』(特許庁技術懇話会ホームページ),2005.5.13.no.237